熱流体・マルチフィジクス解析ソフトウェア CFD-ACE+SUITEの事例
Sandia社の導入事例 [11.01.24]
- 使用ソフト:CFD-ACE+SUITE
- Sandia社は、CFD-ACE+SUITEを使用して、シミュレーションを通じた携帯型化学分析システムの設計を合理化することができました。
シミュレーションを通じた携帯型化学分析システムの設計の合理化
概要
課題
・マイクロ領域で動作する電気機構システム(MEMS)の開発
・プリコンセントレータが、可能な限り多くの分析対象物を収集し、さらにその対象物の大半あるいは全てを可能な限り短時間で放出すること
経緯
Lockheed Martinの100%子会社であるSandia は、有毒物質を素早く検出するための、持ち運び可能な化学分析システムChemLab を開発しました。ChemLabは、プリコンセントレータとして、吸入したガス流から分析対象物をサンプル採取し、次に、その対象物を分離工程に排出します。こうしたマイクロ領域での測定を必要とするプリコンセントレータの開発はきわめて困難でしたが、Sandiaの技術者は、ESI のコンサルタントと共に、「CFD-ACE+計算流体力学ソフトウェア(以下CFD)」を用いて、プリコンセントレータを通過する流体の、流れと化学反応とをシミュレーションすることでこの問題を解決しました。シミュレーションの結果、従来の設計では、流体が、吸着支柱と十分に接触しないまま、プリコンセントレータの側面に流れ去ってしまうせいで、分析対象物の吸着が不十分であることが判明したので、SandiaとESI の技術者は、吸着支柱を調整し直すことで、その接触状態を改善し、吸着、脱着の工程を最適化しました。
効果
・プリコンセントレータ設計の大幅改善
・シミュレーションによる試作回数の減少
Sandiaが開発したChemLab は、軍用化学物質や有毒な工業用化学薬品を検出できる持ち運び可能な化学分析システムとして、国防、環境、医療など各分野で活用されています。プリコンセントレータはパターン金属皮膜による加熱素子を支持する窒化ケイ素薄膜で構成されていますが、この薄膜は、テンプレート多孔質ゾルゲルでコーティングされており、干渉物質を通過させながら分析対象物を選択的かつ可逆的に吸着させることができます。収集工程においては、まず分析対象物を含むガス流がプリコンセントレータチャンバーを通過し、そしてプリコンセントレータ膜に吸着、その後、搬送ガスが装置に流入する間に、薄膜抵抗マイクロヒーターのはたらきで吸着面が加熱され、約0.2 秒間にわたる集中的な化学パルスを浴びた分析対象物は、熱的に脱着されます。
設計上の課題

ガスと支柱の接触が不十分な初期設計
プリコンセントレータの設計においては、吸着面上の分析対象物を最短時間で最大量、収集する必要があり、またセンサーが的確に対象を検出できるよう、分析対象物の流れに鋭いピークを与えることも必要ですが、いずれも困難な課題です。設計の際のパラーメータとなるのは、プリコンセントレータの形状、吸着工程および脱着工程における質量流量レート、吸着工程および脱着工程での搬送ガス、吸着および脱着での動力学、脱着温度プロフィールなどですが、 ChemLabのようなマイクロ流体装置は、サイズが小さいため、局所的な流量の測定に必要なセンサーを取り付けることがほぼ不可能であり、従来のような試作と試験を繰り返しながら設計することは、きわめて困難です。この場合、技術者は、設計を改善しようとする際に、自身の直感と推測を頼りにせざるを得ません。
ChemLabの設計は、CFD-ACE+ を用いてプリコンセントレータの性能をシミュレートすることで、大幅に合理化されました。たとえば初期設計のままでは、流体が、各支柱により生じる障害を避けようとして、プリコンセントレータの両端に沿って勢いよく流れてしまうこと、つまり流れと支柱の接触が非常に少ないことが予め分かったので、この問題点を解決するために、まず支柱の配列を見直すことになり、具体的には、まずプリコンセントレータの側面に沿う逃げ道を塞ぐように支柱が再配置されました。この構想は、ガス流が支柱の列の中を強制的に通過できるようプリコンセントレータのあらゆる部分に支柱を配置することでまず現実化。その後、変更した形状に対してシミュレーションを再実行したところ、吸着支柱との接触が大幅に増え、流れのプロフィールが大きく改善されることが分かりました。
こうして最適な流れが得られる形状が分かったので、次に、分析対象物の吸着および脱着に関わる表面反応を測定するために4種類のシミュレーションを実施しましたが、これは、吸着工程において2種類の流量を適用し、また脱着工程において2種類のガスと2種類の流量を適用するというシミュレーションでした。その結果、流量300mL毎分で分析対象物の吸着量が最も多くなることが分かりました。なお分析対象物濃度は、60mL毎分で劇的に減少し、吸入口から離れた支柱では分析対象物はほとんど検出されませんでした。

CFDを利用したプリコンセントレータを通過する流れの改善
「マイクロデバイスの設計、製造、試験には膨大な費用がかかります。新製品の設計を迅速かつ低コストに推進するためにはシミュレーションの助けが不可欠です。今回ESI グループと共に、マイクロ流体力学、化学反応、流れなどのCFD シミュレーションを行い、設計工程を大幅に合理化できました。」 - サンディア国立研究所、技術スタッフの主要メンバー、Ron Manginell 氏
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